『聖夜天』~四龍島Christmas 3~
降誕祭だ。 本土居留区あたりでは賛美歌もとうに尽きたころ。 「あんたは、俺がそれを、ありがたがると思うのか。マクシミリアン」 「喜ばないと言うのなら、強いてでも喜ばせるまでだ。花路」 押しつけられたのは濃紺に銀砂子の飾り帯。...
『聖夜花』~四龍島Christmas 2~
凍てつく星々がいまにも天から降り注いできそうな夜だ。 賑わう色街から山の手へと上がれば、酒気に温められていた体が、いつの間にやら、す、と冷える。 「寒いぞ、着ていけ」と仲間がよこしてくれた上着を、やはり羽織ってくるのだったと飛は苦笑した。 「邪魔をする。『白龍』」...
『聖夜思』~四龍島Christmas 1~
四龍島西里白龍市、山の手。 「やっぱりなんだか違うなぁ」 屋敷居候のクレイ・ハーパーが、目のまえの贅沢な食事を眺めて溜息をついていた。 「七面鳥は本土の居留区でも手に入らなくて家鴨が出てきてたけど、なんていうかこう……クリスマスっていう雰囲気からは遠いなぁ」...
『飛花 龍唇を惑わす』
誰かが言った。 〃物欲しげに揺れた花の罪に違いない〃 ※ ※ ※ 四龍島、白龍市の夜。 「なあ、マクシム。本当にいいのかい? あとから万里にむっつり顔で小言を言われたりしないかい?」 葡萄酒の瓶を抱えたクレイ・ハーパーが、覚束ない足どりで暗い石段を降りている。...
『南荘一夜ノ夢』
夜の帳に覆われた西里山の手、白龍屋敷。 高台に設けられた別棟の南荘に、幾日かぶりに帰ってきた。 再三「帰れ」と求めてよこし、ついには色街までわざわざ使いをよこして「あらわれなければ目にもの見せてやるぞ」と脅した相手は、今宵に限って姿を見せない。...
『春宵恋々・・・四龍島間奏曲』
色街、花路。 孫大兄の鋭いまなざしがジッと石段を見据えている。 ……今日こそしっかり頭をお守りしなけりゃあ。 羅漢大兄、葉林大兄についで三人目の大兄に立てられ、すでにそれなりの時が経つ。 そのひとが不在のあいだ、精一杯の努力をした。...