『南荘一夜ノ夢』
夜の帳に覆われた西里山の手、白龍屋敷。 高台に設けられた別棟の南荘に、幾日かぶりに帰ってきた。 再三「帰れ」と求めてよこし、ついには色街までわざわざ使いをよこして「あらわれなければ目にもの見せてやるぞ」と脅した相手は、今宵に限って姿を見せない。...
『春宵恋々・・・四龍島間奏曲』
色街、花路。 孫大兄の鋭いまなざしがジッと石段を見据えている。 ……今日こそしっかり頭をお守りしなけりゃあ。 羅漢大兄、葉林大兄についで三人目の大兄に立てられ、すでにそれなりの時が経つ。 そのひとが不在のあいだ、精一杯の努力をした。...